日常への帰還

トップアスリートは、能力主義や競争原理の中で心身を消耗し、ピーク期や現役を引退した後、新しい人生の目標を再構築することに困難を経験することがあり、成績向上やメダル獲得という短期的視野だけではなく、長期的かつ全人的なスケールで、アスリートのサポートを考えることが重要です。

そこで得られた知見は、中途障害者や現役引退後の高齢者のサポート、長期的視点に立った子どもの教育など、広範な射程を持つものと考えられます。また、薬物依存症の自助グループに蓄積された支援の知恵は、アスリートにも多いといわれる依存症の問題や、ドーピング問題を考える上で有益であるだけでなく、メンタルヘルス上の困難を否認しがちなアスリートの中にある、依存症・精神障害へのスティグマに介入することの重要性を示唆します。

本プロジェクトでは、障害、アスリート、依存症という関連する3分野を交差させつつ、過度な能力主義や成果主義、競争原理が人間や社会に与える影響を多面的に明らかにし、全人的かつ長期的なアスリートのサポートについて考えます。またその知見を活かして、日本障がい者スポーツ協会と東京大学による「パラスポーツ先端研究・教育連携プロジェクト」に参画し、「ジュニアパラアスリート向けガイドブック」の作成をすすめます。

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