科学実験室アクセシビリティ検討

理工系への進学を希望しているにもかかわらず、バリアの存在によって進路を変更する学生は少なくない。

大学での障害学生の支援において、講義における配慮についてはノウハウが確立しつつある一方、理工系分野の科目において、身体の感覚や運動機能が求められる実験、実習の場面での支援は立ち遅れている。

例えば、科学教育では視覚的な教材が中心であり、視覚障害者のバリアとなっている。また車椅子の利用者は、実験機器や設備の多くを利用することができず、安全管理が適切に行われているとはいえない。

こうした状況は、差別解消法や、雇用促進法のもと、障害のある学生のみならず教員・研究者に対しても、合理的配慮の提供義務を負う大学にとって、大きな課題になっている。

東京大学のインクルーシブアカデミア事業ではテーマの一つとして、障害がある学生の理工系科目への参加支援を行っている。大学において実験室のバリアフリー化に向けた第一歩として、本発表では車椅子など下肢障害がある人に対してアクセシブルな実験室を作製することを目的とする。このため、車椅子で実験室を利用する場合の課題を特定し、それぞれについて解決策を検討し、実験室の実環境を提案する。